音声エージェント API の料金:10 分の通話で $0.04〜$0.57
目次
音声エージェントとの 10 分間の会話にかかる API 料金は $0.04〜$0.57 です。この差の大半は、スタックを自前で組むか speech-to-speech API を使うか、どの text-to-speech tier を選ぶかで決まります。今回は 1 つの gateway から同じ batch で全経路を計測しました。音声 1 分単位で課金される 3 つの speech-to-text model、実際に合成した音声 1 分単位で比較した 6 つの text-to-speech model、3 つの brain で実行した 8 ターンの LLM 対話です。brain は flash-tier が 2 つ、frontier が 1 つです。さらに GPT Realtime の live session も実行し、lane ごとの料金を測りました。この記事では、各経路の料金を組み合わせ、architecture ごとの 1 分あたりの料金を算出します。
TL;DR
- cascade stack(STT + LLM + TTS)は、会話 1 分あたり $0.0037〜$0.025 です。gpt-realtime-2.1 の実測値は $0.057、mini は $0.016 で cascade の範囲内に収まります。
- flash-tier の brain を使うと、brain より音声合成のほうが高くなります。mainstream 構成では 12 倍です。frontier brain ではこの関係が逆転します。
- realtime の追加料金で得られるのは latency です。音声入力から音声応答までの実測値は 1.7〜2.1 秒、cascade 構成では 4.9〜7.7 秒でした。
- 文字数課金の TTS では、計測した全 model で、中国語の音声 1 分あたりの料金が英語より 3〜7 倍安くなりました。
音声エージェントの仕組みと 2 つの architecture
音声エージェントは、ユーザーの発話を応答音声に変換する loop です。市場にある設計は、いずれも 2 つの形に分かれます。cascade は 3 つの特化型 API を順番につなぎます。まず voice-activity detector がユーザーの発話終了を判定し、speech-to-text が発話を文字起こしします。次に LLM が文字起こしと会話履歴から返答を生成し、text-to-speech が音声に変換します。各経路は別々に計測、課金されます。このため cascade は安価で、部品も交換しやすい構成です。STT、brain、voice を個別に選び、それぞれに少額の料金を支払います。
speech-to-speech(realtime)architecture は、この 3 つの経路を、WebSocket 経由で音声を直接入出力する 1 つの model に置き換えます。(Synthorai はこの方式を native で提供しています。gateway は /v1/realtime で WebSocket を扱うため、既存の OpenAI Realtime SDK は endpoint を変更するだけでそのまま動作します。詳細は realtime API のドキュメント を参照してください。この記事の realtime session は、すべてこの接続で実行しました。)main path では文字起こしを行いません。model は transcript ではなく、声の調子や timing を直接認識します。会話履歴は server-side に audio token として保持され、応答のたびに model へ再送されます。この設計により、cascade では構造上実現できない 2 つの特性が得られます。音声入力から音声応答まで 2 秒未満の latency と、自然な barge-in です。ユーザーが応答の途中で割り込むと、model はその割り込みを音声として認識します。課金構造も変わります。3 つの固定 meter ではなく、audio-in と audio-out の各料金、つまり lane に加え、会話履歴の累積的な再課金が発生します。この増加を抑えるには cache が必要です。
以下では、この 2 つの構成をそのまま比較します。cascade は各経路を個別に計測し、realtime loop は lane ごとに計測します。
音声エージェントの 1 分あたりの料金
今回比較した 6 構成では、会話 1 分あたり $0.0037〜$0.057 で、15 倍の差がありました。以下では 2 つの単位を区別する必要があります。会話 1 分は通話の wall-clock で 1 分、音声 1 分は片側の実際の発話が 1 分という意味です。STT と TTS は後者で課金されます。条件はすべて同じです。ユーザーとエージェントの発話時間を半分ずつとし、1 分に 4 回やり取りする短い support-style の会話を使いました。cascade の各経路は、実測した音声時間と token 数で課金しています。realtime の数値は live で実行した 8 ターンの session に基づきます。
| 構成 | 聞く | 話す | brain | $/会話 1 分 | 10 分の通話 |
|---|---|---|---|---|---|
| Cascade、budget(qwen3-asr-flash + deepseek-v4-flash-0731 + google-tts-standard) | $0.0010 | $0.0020 | $0.0006 | $0.0037 | $0.04 |
| Cascade、mainstream(gpt-4o-mini-transcribe + deepseek + tts-1) | $0.0015 | $0.0076 | $0.0006 | $0.0097 | $0.10 |
| Speech-to-speech、gpt-realtime-2.1-mini | — | — | — | $0.0159 | $0.16 |
| Cascade、SOTA brain(gpt-4o-mini-transcribe + gpt-5.6 + tts-1) | $0.0015 | $0.0076 | $0.0110 | $0.0200 | $0.20 |
| Cascade、premium(whisper-1 + gemini-3.7-flash + google-tts-chirp3-hd) | $0.0030 | $0.0172 | $0.0050 | $0.0252 | $0.25 |
| Speech-to-speech、gpt-realtime-2.1 | — | — | — | $0.0573 | $0.57 |
両端の値より重要なのは、中間にある 2 つの位置関係です。flagship realtime API は premium cascade の 2.3 倍です。この料金で得られるのは同等の品質ではなく、cascade では実現できない機能です。今回の session では音声入力から音声応答まで約 2 秒、native の barge-in、さらに音声を text に変換しないため、声の調子や話す速度などの prosody も保たれます。一方、mini は mainstream と premium の cascade の間に入ります。そのため「cascade 対 realtime」が純粋な料金比較になるのは flagship tier だけです。mini tier では、料金ではなく latency と control の選択になります。
残りの 3 つの cascade は flash-tier brain を使い、比較対象は OpenAI の flagship voice model です。公平性を確認するため、SOTA-brain の行では、cascade 側にも同じ vendor の frontier text model を使いました。gpt-5.6 は 100 万 token あたり input が $5、output が $30 です。それでも cascade は会話 1 分あたり $0.0200 で、flagship realtime より 2.9 倍安くなります。frontier 価格でも text の 1 ターンで処理する高価な token は、audio lane より 2 桁少ないためです。同等の品質に必要な brain の料金は 1 分あたり $0.010 ですが、architecture の差は埋まりません。
cascade の料金を左右する経路
flash-tier model を brain に使う限り、最も高いのは音声合成です。mainstream 構成では、会話 1 分あたり TTS に $0.0076、LLM に $0.0006 かかり、12 倍の差があります。budget 構成でも、話す経路は brain の 3 倍です。brain を gpt-5.6 に upgrade すると、関係が逆転します。1 回のやり取りが $0.00274 となり、brain は 1 分あたり $0.0110 で最大の経路になります。これは tts-1 の音声合成経路の 1.4 倍です。flash brain では音声合成が、frontier brain では brain が音声エージェントの料金を支配します。speech-to-text はその中間で、会話 1 分あたり $0.0010〜$0.0030 です。(14 model を比較した 1 分あたりの料金 を今回の batch でも再確認しました。音声 1 分あたり qwen3-asr-flash は $0.00198、gpt-4o-mini-transcribe は $0.00294、whisper-1 は $0.006 です。)
reasoning を使わなければ、brain の料金はほぼ無視できます。8 ターンの support 対話では、deepseek-v4-flash-0731 の steady state で、1 ターンあたり input 約 310 token、output 71 token となり、1 回のやり取りは $0.00016 でした。gemini-3.7-flash で同じ対話を行うと 1 回あたり $0.00126 で、8 倍です。原因は token の内訳にはっきり表れています。2 文の返答を生成するために、各ターンで 89〜361 reasoning token を使っています。Gemini 3.7 Flash では thinking を無効にできません。そのため、この model で音声エージェントを構築すると、すべてのやり取りに reasoning の追加料金が発生します。thinking を無効にできる model なら、音声の 1 ターンは単純な単一 step なので、安全に無効化できます。
text-to-speech の音声 1 分あたりの料金
合成音声 1 分あたり $0.004〜$0.034 で、8.4 倍の差があります。文字単価だけでは、この差は分かりません。以下の model はすべて input の文字数で課金されます。そこで、固定した英語と中国語の文章を合成し、返された音声の長さを計測して料金を割りました。
| Model | 定価 | 英語 $/音声 1 分 | 中国語 $/音声 1 分 | 中国語対英語 |
|---|---|---|---|---|
| google-tts-standard | $4/M chars | $0.0041 | $0.0007 | 0.18x |
| qwen3-tts-instruct-flash | $11.5/M | $0.0098 | $0.0033 | 0.34x |
| tts-1 | $15/M | $0.0151 | $0.0043 | 0.28x |
| google-tts-neural2 | $16/M | $0.0162 | $0.0030 | 0.18x |
| tts-1-hd | $30/M | $0.0303 | $0.0085 | 0.28x |
| google-tts-chirp3-hd | $30/M | $0.0344 | $0.0052 | 0.15x |
隠れた変数は話す速度です。tts-1-hd と chirp3-hd の定価は同じ $30 ですが、chirp3-hd は今回の英語文章を短い時間で速く読み上げます。そのため、音声 1 分あたりの料金は 13% 高くなります。表の最安側では、google-tts-standard が、ほかに計測したどの model の半額未満で合成音声 1 分を生成します。定価から model の順位は分かりますが、実際の料金比較には音声 1 分あたりの単価が必要です。
中国語の差がここまで大きいのは予想外でした。中国語は 1 文字に含まれる発話情報が多いため、1 分の音声に必要な課金対象文字数が英語の 3〜7 分の 1 になります。文字数課金では、中国語の音声エージェントの発話経路は、同じエージェントの英語版より 66〜85% 安くなります。さらに text 側でも、言語別の token 数の差 が加わります。
realtime API の料金に見合う用途
音声入力から音声応答まで 2 秒で返し、native に割り込みを処理することに価値がある用途です。料金だけで比べると、flagship は今回構築したすべての cascade より不利です。公式の 2 つの audio token 換算は、今回の batch でも正確に再現できました。30.0 秒の input audio は 300 token(100 ms あたり 1 token)、3.7 秒の output は 74 token(50 ms あたり 1 token)です。7 月の検証 と同じ割合でした。gpt-realtime-2.1 の定価では、聞くだけで 1 分あたり $0.0192、話すだけで 1 分あたり $0.0768 です。長い session で累積する会話履歴の再課金は、この金額に含まれていません。
この累積は、見た目ほど急ではありません。cache が効くためです。8 ターンの session では、応答ごとの input が 72 token から 643 token まで増えました。ただし、8 ターン目ではそのうち 512 token が cache 対象となり、100 万 token あたり $0.40 でした。session 全体では、input token の 76% に cached rate が適用されました。実測した総額は 1.31 分のやり取りで $0.0752、会話 1 分あたり $0.0573 です。この料金の lane 別内訳も確認する価値があります。66% が audio out、17% が fresh audio in、16% が text です。model は各応答の text 表現も出力し、100 万 text-output token あたり $24 が課金されます。つまり「speech-to-speech」の料金の約 6 分の 1 は、実質的に text model の請求です。同じ実測 token profile を mini の料金に当てはめると $0.0159 になります。より注目すべきなのはこちらです。premium cascade より安いうえに、cascade architecture では実現できない latency と barge-in を維持できます。
realtime に残る追加コストは、token 単価ではなく運用面にあります。session は 60 分で強制終了し、audio history を引き継いで再開できません。そのため、60 分を超える会話では cache が空の状態から再開します。詳細は 7 月の検証 で説明しています。
speech-to-speech は cascade よりどれだけ速いか
上記の構成では 2.3〜4.5 倍速く、cascade を高機能にするほど差が広がります。料金表と同じ 6 構成を、同じ単位で各 bar に表示しています。1 回の会話ターンについて、現実的な条件で request から response 完了までを計測しました。5 秒の発話を input し、2 文の返答を output しています。cascade の bar は、3 回計測した各経路の median を合計した値です。
数値では、cascade の 1 ターンは budget が 4.9 秒、mainstream が 5.6 秒、SOTA brain が 5.7 秒、premium が 7.7 秒です。一方、speech-to-speech はどちらの tier も同じ範囲に収まりました。gpt-realtime-2.1-mini は live で実行した 4 ターンで 1.6〜2.1 秒、gpt-realtime-2.1 は 8 ターンで 1.7〜2.1 秒でした。
この chart と料金表を並べると、trade-off が明確になります。cascade では料金と latency が逆方向に動きます。budget 構成は最も安く、cascade の中で最速です。premium 構成は budget の 6.8 倍を支払いながら、2.8 秒遅くなります。高価な部品である deliberation を行う brain と HD voice は、処理も遅いためです。speech-to-speech は、どちらの model も tier に関係なく同じ 2 秒前後に収まります。そのため mini は、2 つの cascade より安く、4 つすべての cascade より高速です。
この結果から、さらに 3 つの点が分かります。1 つ目は、すべての cascade で LLM が latency の bottleneck になり、必須の reasoning によって処理時間がほぼ倍増することです。gemini-3.7-flash は 2 文の返答を考えるために 4.5 秒かかりました。deepseek は 2.6 秒、gpt-5.6 は 2.7 秒です。token 料金を 8 倍にした reasoning の追加負担によって、premium 構成は速度でも最下位になりました。2 つ目は、各経路で計測した最速の部品だけを選んでも、4.1 秒が下限になることです。構成は gpt-4o-mini-transcribe、deepseek、google-tts-standard です。それでも realtime の 2 倍を超えます。voice-activity detector が発話終了を待つ時間と、音声を再生する時間はまだ含まれていません。3 つ目は、cascade の行が sequential に full-response の wall time を計測している点です。本番の cascade で LLM を streaming TTS へ streaming すれば、最も大きい 2 つの経路を重ねて差の大部分を縮められます。ただし、その重複処理は自分で実装し、調整する必要があります。realtime API なら、最初の WebSocket session から 2 秒で動作します。
cascade の 1 ターンでは、何に時間を使っているのでしょうか。大半は content の処理ではなく、3 回の request 自体です。純粋な network 時間は小さく、API edge への warm HTTPS round trip は約 0.09 秒でした。3 つの経路を serial に実行しても、純粋な network は 1 ターンあたり約 0.3 秒です。connection が cold なら、TLS handshake ごとに 0.2 秒が加わります。支配的なのは、各 request の固定 dispatch です。そこで、最速構成の各経路をほぼ空の payload で再実行し、固定時間を分離しました。1 token の LLM 応答でも 2.5 秒、0.5 秒の音声 clip の文字起こしでも 1.6 秒、2 語の音声合成でも 0.4 秒かかりました。この下限を合計すると 4.4 秒で、通常サイズの payload で測った 4.1 秒と計測誤差の範囲で一致します。cascade の 1 ターンは、ほぼすべてが request ごとの overhead です。実際の content は、1 token ではなく 70 token の返答でも、10 倍長い clip でも、ほぼ追加料金なしで処理されています。この結果には両面があります。cascade の返答を短くしても速くなりません。一方で、request を削減または重複実行すれば、実際の bottleneck を直接改善できます。各経路を streaming でつなぎ、persistent connection を使う方法です。realtime API は、この考え方を突き詰めた構成です。1 つの socket を維持するため、各ターンで新しい request cycle が発生しません。
FAQ
音声エージェントを最も安く動かす方法は?
budget cascade です。聞き取りに qwen3-asr-flash、brain に deepseek-v4-flash-0731、音声合成に google-tts-standard を使うと、会話 1 分あたり $0.0037、10 分の通話で約 $0.04 です。flagship speech-to-speech より 15 倍安い一方、音声入力から音声応答までの latency と、自然な割り込み処理は失われます。
GPT Realtime は cascade stack より高いですか?
flagship は高くなります。gpt-realtime-2.1 の実測値は会話 1 分あたり $0.0573 で、premium cascade の 2.3 倍、budget cascade の 15 倍です。gpt-realtime-2.1-mini は違います。同じ token profile で会話 1 分あたり $0.0159 となり、mainstream と premium の cascade の間に入ります。mini tier では、料金ではなく latency と control で選ぶことになります。
音声エージェントで最も料金が高い部分は?
今回比較した flash-brain cascade では、すべて text-to-speech です。会話 1 分あたり $0.002〜$0.017 で、flash LLM の $0.0006〜$0.005 を上回ります。mainstream 構成では 12 倍です。frontier brain では逆転し、gpt-5.6 が 1 分あたり $0.0110、tts-1 が $0.0076 になります。TTS の中でも、model の選択によって音声 1 分あたり 8.4 倍の差があり、今回計測した中で最大の調整要素です。
会話する言語で料金は変わりますか?
発話経路では大きく変わります。文字数課金では、計測した 6 つの TTS model すべてで、中国語音声 1 分の料金が英語より 3〜7 倍安くなりました。1 文字に含まれる発話情報が多いためです。今回再確認した 3 つの model では、speech-to-text の料金は 2 言語で同じでした。text 側の差は、言語別 tokenizer の token 数の差 に従います。
2026-08-17 に Synthorai gateway 経由で全経路を同じ batch として計測しました。6 つの TTS model で固定した英語と中国語の文章を合成し、返された file から音声時間を読み取っています。各 2 回実行しました。3 つの STT model では標準 fixture clip を使用し、billing header から 1 分あたりの料金を取得しました。3 つの LLM brain は flash-tier が 2 つ、frontier が 1 つで、script 化した 8 ターンの support 対話を実行し、各ターンの usage を記録しました。各経路の latency probe では、STT に 5 秒の発話、LLM に steady-state の対話ターン、TTS に 2 文の返答を使い、full-response の wall time を計測しました。n=3 です。同じ経路で minimal-payload floor probe も実施し、1 token の返答、0.5 秒の clip、2 語の音声合成を各 3 回計測しました。API edge への warm および cold の round-trip 時間も測っています。GPT Realtime は live session で 5 秒の発話を使用し、flagship は 8 ターン、mini は 4 ターン実行しました。response.done usage event から lane ごとの料金を算出しています。mini の料金は、flagship session で実測した token profile に mini の定価を適用して算出し、mini の latency 範囲は専用 session で実測しました。cascade の合計値は、発話時間を双方で半分ずつ、1 分あたり 4 回のやり取りとして計算しています。料金は計測時点の model catalog にある定価です。seed-tts-2.0 は onboard 済みですが、安定した計測結果が得られるまで除外しています。料金と話す速度は変わるため、architecture を決定する前に再計測してください。
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