Claude Opus 5.5 vs Opus 5:回答は同じ、出力 token は半分
目次
Claude Opus 5.5 の定価は Claude Opus 5 より 20% 安い。入力 100 万 token 当たり $4、出力 100 万 token 当たり $20 で、Opus 5 はそれぞれ $5 と $25 だ。この 20% はモデルの挙動に関係なく得られる。確認すべきなのは、単価差を除いたあとにどれだけコストが下がるかだ。各モデルの default 設定で 13 件の single-shot タスクを実行したところ、Opus 5.5 の請求額は 65% 少なく、同じ単価で計算しても 56% 安かった。multi-hop tool loop では差が小さくなり、請求額では 37%、同じ単価では 22% 安かった。
TL;DR
- 採点した 468 回の call では、Opus 5.5 の task 当たりコストは $0.0072、Opus 5 は $0.0204 だった。どちらも全 task に正解した。
- 同じ単価で計算しても、Opus 5.5 は 56% 安かった。平均出力 token は 341 で、Opus 5 は 799 だった。
- 4 問の tool loop では、同じ単価での差が 22% まで縮まった。入力 token がコストの大半を占め、両モデルが同じ file を読むためだ。
maxeffort の Opus 5.5 は、この loop で自身の default の 3.3x のコストがかかったが、追加で解けた問題はなかった。tool_choiceをanyまたは特定の tool に設定すると、現在は HTTP 400 が返る。Opus 5 はどちらも受け付ける。
Anthropic は 2026-09-22 に Opus 5.5 をリリースし、一般的な workload では Opus 5 より「実行コストが 40% 低い」と説明した。この主張のうちモデルの挙動に左右されるのは、task 当たりの token が減るという部分だけだ。そこで今回は、その部分を測定した。
Claude Opus 5.5 では何が変わったのか?
価格より大きな変更は、thinking の切り替えがなくなったことだ。adaptive thinking では、回答前にどこまで reasoning するかをモデル自身が決める。API から内容を確認できなくても、reasoning token は出力として課金される。Opus 5.5 では常にこの mode が有効で、調整できるのは effort だけだ。low から max まで 5 段階あり、thinking に使える量を request parameter で指定する。
Opus 5 では thinking: {"type": "disabled"} を指定できた。Opus 5 の測定 で請求額を Opus 4.8 と同水準まで下げられたのは、この設定だけだった。Opus 5.5 では使えない。
| Opus 5 | Opus 5.5 | |
|---|---|---|
| 定価(入力/出力、MTok 当たり) | $5 / $25 | $4 / $20 |
| Thinking | adaptive、effort が high 以下なら無効化可能 | adaptive、常に有効 |
| Default effort | high | medium |
| Tool の強制使用 | 受け付ける | 400 error(実測) |
| Context window/最大出力 | 1M / 128K | 1M / 128K |
| Knowledge cutoff | 2026 年 5 月 | 2026 年 6 月 |
| リリース日 | 2026-07-24 | 2026-09-22 |
| Tool call 間の text | text block | thinking block、default の表示設定では空 |
| Safeguard の category | cybersecurity | cybersecurity と biology、reasoning 抽出要求の拒否 |
表の中でも、特に 2 点が重要だ。default effort は high から medium に 1 段階下がった。effort field を送らない request は、Opus 5 と同じ深さでは実行されない。進捗表示の変更も通知なく起きる。以前は tool call 間に短い text が出力されていたが、現在は thinking block として届く。明示的に要求しない限り text は空なので、進捗を streaming 表示する UI は error を出さずに何も表示しなくなる。
リリース時の benchmark はどうだったか?
Anthropic が公開したリリース時の表では、Opus 5.5 が coding と knowledge work の全 benchmark で Fable 5.1 を上回り、大半で GPT-6 Astra も上回った。以下は Anthropic が公開した数値で、adaptive thinking と max effort を使用している。Terminal-Bench の行だけは xhigh で実行されている。
| Benchmark | Opus 5.5 | Fable 5.1 | Opus 5 | GPT-6 Astra |
|---|---|---|---|---|
| Terminal-Bench 4.0(agentic coding) | 66.4% | 55.8% | 52.3% | 57.9% |
| FrontierCode v1.1 | 54.4% | 50.3% | 48.0% | 53.3% |
| CursorBench 4.0 | 57.8% | 51.8% | 46.6% | 未公表 |
| GDPval-AA v2.1(knowledge work、Elo) | 1846 | 1735 | 1708 | 1542 |
| AutomationBench(business workflow) | 40.0% | 31.4% | 26.9% | 41.4% |
| Terminal-Bench-Science 0.1 | 58.7% | 52.6% | 29.0% | 64.6% |
| OSWorld 2.0(computer use) | 81.8% | 80.7% | 74.0% | 未公表 |
Anthropic 自身も、この表には珍しい注意書きを付けている。この水準では「benchmark の差は、実環境での差を判断する指標として以前ほど信頼できない」とし、実際の Fable 5.1 との差は score ほど大きくないと説明している。数値を引用する前に確認すべき脚注も 2 つある。AutomationBench は Zapier が fallback model なしで実行しており、safeguard が介入するたびに失敗として数えている。また、表全体で本番用 safeguard が有効になっている。classifier が介入した場合、cybersecurity task は Opus 4.8 に、biology task は Opus 5 に渡されている。
ただし、この表から task のコストは分からない。そこで実測した。
Single-shot でも本当に安いのか?
安い。しかも、その大半は単価差ではなく実効効率によるものだ。single-shot は 1 request、1 answer、tool なしの処理を指す。200 step の反復 rule や、通行不可の cell を含む grid 上の経路数など、算術と count の問題を使った。13 件の task を各 3 回、5 段階すべての effort と default で Opus 5.5 と Opus 5 に実行させた。採点対象は合計 468 call だ。実行前に全問の正解を Python で brute-force し、各 prompt には一意の random string を付けた。これにより、モデルまでのいずれかの layer が cache 済みの重複 request に回答することを防いだ。task 当たりのコストは response の値ではなく、各 call で課金された token と Anthropic の定価から計算した。thinking も含まれる。
| Effort | Opus 5.5 の出力中央値 | Opus 5.5 の $/task | Opus 5 の出力中央値 | Opus 5 の $/task |
|---|---|---|---|---|
| default | 193 | 0.0072 | 448 | 0.0204 |
| low | 185 | 0.0060 | 439 | 0.0201 |
| medium | 218 | 0.0085 | 538 | 0.0200 |
| high | 223 | 0.0094 | 542 | 0.0206 |
| xhigh | 233 | 0.0111 | 525 | 0.0197 |
| max | 762 | 0.0240 | 532 | 0.0220 |
default では両モデルとも正答率 100% だった。ほかの level でも 97% 以上で、3 件の不正解はそれぞれ異なる task と level に分散していた。低い level に集中してはいない。この task set では正答率が急落する地点はなく、差はすべてコストに表れた。
effort ごとの変化は、2 つのモデルで異なる。Opus 5 は low から max まで $0.0197-$0.0220 で、差は 12% に収まる。Opus 5.5 は $0.0060-$0.0240 と 4x の幅がある。Opus 5.5 では effort が実際に効くが、Opus 5 ではほぼ no-op だ。移行時に同じ設定をそのままコピーすると、以前とは大きく異なる挙動になる可能性がある。
難度が最も高い 5 task では差がさらに広がった。default の Opus 5.5 は task 当たり $0.0113、Opus 5 は $0.0375 だった。出力 token の中央値は 585 対 1,145 だった。
Agent の請求が積み上がる tool loop ではどうなるか?
loop でも削減効果は残るが、倍率は小さくなる。Opus 5.5 と Opus 5 を比較するなら、tool loop が実態に近い。1 turn は 1 request だ。モデルが tool を要求し、code が実行し、会話履歴全体をモデルへ送り直す。5 turn の会話なら、増え続ける履歴に 5 回分の料金がかかる。請求額を左右するのは token 単価ではなく turn 数だ。小規模な synthetic service を用意し、両モデルに 3 つの tool を与えた。file 一覧、file 読み込み、検索だ。問題は 4 問で、回答には 3 または 4 file にまたがる call chain を追う必要がある。同じ surface、tool、prompt を使い、各条件を 12 回ずつ実行した。
| 条件 | 正解 | Turn 中央値 | Tool call 中央値 | 出力 token 中央値 | $/run |
|---|---|---|---|---|---|
| Opus 5.5、default | 12/12 | 4 | 5 | 427 | 0.0326 |
Opus 5.5、low | 12/12 | 4.5 | 5 | 430 | 0.0330 |
Opus 5.5、max | 12/12 | 5 | 12 | 3,124 | 0.1087 |
| Opus 5、default | 11/12 | 5 | 7 | 666 | 0.0519 |
default 同士では、Opus 5.5 の run 当たりコストが Opus 5 より 37% 少なかった。turn は 12%、出力 token は 30% 少ない。Opus 5 は 1 run 失敗したため、正解 1 問当たりでは差が 43% に広がる。vendor が示した「実行コストが 40% 低い」という数値に近く、実際の請求書にもこの差が出る。
一方で、この workload では単価差の寄与が大きい。理由は明確だ。loop は turn ごとに履歴を再送し、両モデルは同じ file を読む。出力 token は 30% 減っても、総 token は 19% しか減らなかった。最もコストがかかる workload ほど、出力を短くする効果は小さい。次の section で、この差を数値に分ける。
loop で Opus 5.5 を low に下げてもコストは減らなかった。平均で 1 turn 多く要求し、再送する履歴の追加分が token 削減を打ち消した。single-shot では素直に効いた effort の調整も、loop では効果がなくなる。請求額を決めるのは reasoning の深さではなく turn 数だからだ。
削減額のうち、単価引き下げによる分はどれくらいか?
workload の形によって、7 分の 1 から 5 分の 2 まで変わる。下表の中央列は、実測した Opus 5.5 の token を Opus 5 の単価で再計算している。Opus 5 と同じ単価に固定したとき、Opus 5.5 が出力を減らすことでどれだけ節約できるかを示す。
| Workload | 請求額の差 | 同じ単価での差 | 出力 token |
|---|---|---|---|
| 13 件の single-shot task、default | -65% | -56% | -57% |
| そのうち難度が最も高い 5 件 | -70% | -62% | -63% |
| Multi-hop tool loop、default | -37% | -22% | -30% |
single-shot の差は実効効率によるものだ。削減額のうち単価引き下げによる分は 14% だけで、残りはモデルの出力が短くなったことで生じている。運用計画では tool loop の行を重視すべきだ。agent traffic の多くがこの形になり、見かけ上の削減額のうち 41% は単価引き下げによる。
Effort を上げる価値はあるか?
今回の workload では価値がなく、コスト増も大きかった。Opus 5.5 の max は tool loop で run 当たり $0.1087 かかり、自身の default の 3.3x だった。解けた問題は同じ 12 問だ。追加の budget は tool call に使われた。中央値は default の 5 に対して 12、出力 token は 427 に対して 3,124 だった。single-shot task では、max だけが Opus 5 より高く、$0.0240 対 $0.0220 だった。
この budget は reasoning に使われる。単一回答の task では、Opus 5.5 の出力 token のうち thinking が占める割合は default で 98.4%、max で 99.6% だった。すべて出力単価で課金されるが、default の表示設定では内容を確認できない。Anthropic も max は frontier 問題に限定するよう案内している。実測結果は明確だ。すでに解ける task では、effort を上げるほどコストだけが増える。
Model ID を変更すると何が壊れるか?
Opus 5 で動く 2 種類の request が、Opus 5.5 では 400 を返す。どちらも既存 code で使われている可能性が高い。
tool の強制使用は拒否される。chat model から構造化 JSON を取得するために特定の tool call を固定している client では、次の error が返る。
tool_choice: type "tool" and "any" are not supported for this model.
同じ error は OpenAI-compatible client 経由でも発生する。こちらでは同じ request を tool_choice: "required" または特定の function として指定する。auto と none は引き続き使える。移行時は、どの条件で tool を使うかを prompt に明記し、schema-valid な JSON が必要なら strict tool schema または structured output を使う。
thinking も無効化できない。thinking: {"type": "disabled"} と手動の budget_tokens はどちらも失敗する。OpenAI-compatible surface でも、相当する reasoning_effort: "none" は拒否される。代わりに effort parameter を使う。
import anthropic
client = anthropic.Anthropic()
response = client.messages.create(
model="claude-opus-5-5",
max_tokens=4096,
messages=[{"role": "user", "content": "Summarize this incident report in five bullets."}],
output_config={"effort": "low"}, # low | medium | high | xhigh | max; medium is the default
)
# Thinking is billed as output whether or not you can read it.
print(response.usage.input_tokens, response.usage.output_tokens)
low は以前の thinking 無効化に最も近い。今回の single-shot set では最安で、正答率も維持した。ただし thinking がなくなるわけではない。モデルは引き続き thinking を実行し、その token は出力として課金される。
Prompt の token budget はそのまま使えるか?
token budget はそのまま引き継げる。同じ 4 種類の入力を両モデルで数えると、英語の文章は 1,277 対 1,275 token、Python は 583 対 581、JSON の tool argument blob は 482 対 480、中国語の文章は 500 対 498 だった。常に生じる 2 token の差は request framing によるもので、text によるものではない。Opus 5 向けに調整した context budget や chunking threshold を Opus 5.5 で再測定する必要はない。
いつ切り替えるべきか?
コストを重視するなら、上記 2 種類の request を修正し次第 Opus 5.5 に移行してよい。単価引き下げの効果を除いても、同じ正答率で single-shot は 56%、tool loop は 22% 安い。無視できる差ではない。多くの deployment が実際に経験するのも、default 同士の比較だ。
effort は引き継ぐのではなく、再調整する。default は high から medium に変わり、調整幅は Opus 5 の 4 倍になった。最適な level は workload の形で変わる。single-shot task では low が最安で正答率も維持したが、tool loop では default が low と max の両方を上回った。
FAQ
Claude Opus 5.5 は本当に Opus 5 より 40% 安いのか? 請求額では近い。今回の tool loop では Opus 5.5 の run 当たりコストが Opus 5 より 37% 少なく、single-shot task では 65% 少なかった。このうち 20 percentage point は、モデルの挙動に関係なく得られる単価差だ。単価差を除いた効率改善は、loop で 22%、single-shot task で 56% だった。
Opus 5.5 でも thinking を無効化できるか?
できない。thinking: {"type": "disabled"} と手動の token budget は、Opus 5.5 ではどちらも 400 を返す。代わりに output_config.effort を使う。最安の設定は low だ。どの level でも thinking token は出力として課金される。
Tool の強制使用は何に置き換えればよいか?
tool_choice: {"type": "auto"} を維持し、tool を使う条件を prompt に明記する。schema-valid な JSON が必要なら、strict tool schema または structured output を使う。Opus 5.5 は any と特定 tool の指定を暗黙に downgrade せず、400 で拒否する。誤った回答ではなく、request の失敗として表面化する。
Prompt size を再測定する必要はあるか? ない。同じ text なら、文章、code、JSON、中国語のすべてで Opus 5 と Opus 5.5 の課金 token 数は同じだった。context budget は変更せずに引き継げる。
Opus 5.5 は Fable 5.1 の代わりになるか? Anthropic 自身の benchmark 表では、Opus 5.5 は掲載されたすべての benchmark で Fable 5.1 を上回り、token 単価はその 40% だ。一方で Anthropic は、Fable 5.1 を高難度の reasoning と long-horizon agentic work 向けに位置付けたままで、実環境での差は score ほど大きくないとも説明している。表だけで判断せず、自分たちの eval を再実行するのが確実だ。
関連する測定結果:Claude Opus 5 と Opus 4.8 の比較、GPT-6 Astra の effort 別測定、vendor 別の thinking 制御。
測定日はリリース翌日の 2026-09-23。Claude API と OpenAI-compatible surface への gateway を経由した。採点対象の single-shot call は 468 回で、内訳は local で brute-force した正解付きの 13 task、各 3 回、6 種類の effort 設定、2 model。tool loop は 48 run で、内訳は 4 件の multi-hop 問題、各 3 回、4 条件。prompt には salt を付与し、各モデルは effort parameter を渡せる surface から実行した。コストは response の値ではなく、Anthropic の定価から計算した。