DeepSeek V4.1 Flash 1017:思考オフで小規模コード修正 30/30 件
目次
思考をオフにした DeepSeek V4.1 Flash 1017 は、コードを編集してテストする小規模タスクを 30 件すべて解決した。成功 1 件あたりの費用は $0.0042 で、標準の思考レベルの $0.0066 より 36% 安い。テスト実行ツールを外しても 30 件中 28 件を解決した。一方、制約付きの数え上げなど、1 回の応答内で答えを計算する単発の問題では、思考オフの正解は 39 件中 11 件にとどまった。思考とは、回答前にモデルが内部で行う推論であり、出力 token として課金される。その量を指定するリクエストパラメータが reasoning_effort で、値は low、標準の high、max から選ぶ。thinking: {"type": "disabled"} を指定するとオフになる。10 月 17 日のリリースから 2 日後に全設定を測定した。費用には DeepSeek のピーク時間帯の定価、入力 100 万 token あたり $0.30、出力 100 万 token あたり $1.20 を使った。
TL;DR
- DeepSeek V4.1 Flash 1017 のピーク料金は 100 万 token あたり $0.30/$1.20、オフピークはその半額。ピーク時間帯は週 168 時間のうち 35 時間。
- エージェントとして実行した小規模なコード修正タスクは、どの設定でも 30 件中 30 件を解決。成功 1 件あたり、思考オフで $0.0042、標準の
highで $0.0066、maxで $0.0099 だった。 - 13 種類の単発推論タスクでは、思考オフは 39 回中 11 回正解し、思考を有効にした全レベルでは 39 回すべて正解した。
- DeepSeek V4.1 Flash 1017 は、1,001,531 token のプロンプト内に隠した情報を、3 つの位置すべてで取り出せた。
10 月 17 日の変更点と 1017 の料金
DeepSeek V4.1 Flash 1017 は、DeepSeek の API 上で 9 月版の V4.1 Flash を置き換えた。価格は変わらない。DeepSeek のリリースノートでは「前バージョンよりタスクの完了が速く、出力が短い」としている。実際のコードリポジトリの問題を修正する DeepSWE v1.1 について、タスクあたりの費用と合格率のグラフも掲載されている。プロジェクト全体を通した作業の改善は「自己フィードバックを用いた強化学習」によるものだという。重みは公開されており、Hugging Face からダウンロードして自前でホストできる。導入時に確認しておくべきモデル名、料金、ピーク時間帯、tokenizer の扱いは次のとおり。
- DeepSeek の API では、同じモデル名で呼び出されるモデルが変わった。DeepSeek での ID は
deepseek-flashで、料金ページによると、旧名のdeepseek-v4-flashとdeepseek-v4-flash-vision-expでも現在は 1017 が提供される。DeepSeek を直接呼び出している場合、コードを 1 行も変えていなくても新モデルに切り替わっているため、評価をやり直す必要がある。Synthorai では従来のモデル ID を旧版のまま維持した。詳細は最後の節で説明する。 - 料金は変わっていない。以下は 100 万 token あたりのドル建て料金。キャッシュヒットとは、繰り返し送る system prompt など、過去のリクエストでサーバーが受け取った入力を指す。
| キャッシュヒット | 入力(キャッシュミス) | 出力 | |
|---|---|---|---|
| ピーク | $0.006 | $0.30 | $1.20 |
| オフピーク | $0.003 | $0.15 | $0.60 |
- 週の大半はオフピークにあたる。ピーク時間帯は平日の UTC 01:00 から 04:00 と 06:00 から 10:00(北京時間 09:00 から 12:00 と 14:00 から 18:00)。週末と中国の祝日は終日オフピークになる。
- tokenizer は変わっていない。英語、中国語、Python、JSON の同じサンプルを使ったところ、1017、9 月版 V4.1 Flash、V4 Pro の token 数はすべて一致した。既存の token 予算をそのまま使える。
Artificial Analysis のランキングを 10 月 19 日に確認したところ、最高設定の 1017 は 45.1、9 月版は 39.5 だった。この指標は、Artificial Analysis 自身が実行するエージェント、コーディング、知識、科学のベンチマークをまとめたものだ。DeepSeek は自社プラットフォームで Search API と Fetch API も公開した。それぞれクエリに対する Web 検索結果と URL の内容を返し、料金はいずれも 1,000 回あたり $0.75。DeepSeek API キーを使った Claude Code、Codex、DeepSeek Harness からの呼び出しは、2026 年 10 月 31 日 16:00 UTC まで無料となる。この条件は DeepSeek の API にのみ適用される。今回はこれらの API も、大規模プロジェクトに関する主張も検証していない。以降は 1017 単体を思考設定別に測定する。
単発の推論にはどの思考レベルを使うべきか
今回のタスクには low で十分だったが、思考オフでは不十分だった。1017 に、標準で使っている 13 種類のタスクを実行させた。制約付きの数え上げ、ルールを 200 回適用する問題、ナップサック問題、剰余演算など、答えを一意に検証できる問題だ。各タスクを設定ごとに 3 回実行し、各回を 1 リクエストで完結させた。正解 1 件あたりの費用は、ピーク時間帯の定価で計算した総費用を正解数で割った値となる。
| 設定 | 正解数(比較的簡単な 8 タスク) | 正解数(難しい 5 タスク) | 全 39 回の出力 token 数 | 正解 1 件あたりの費用 |
|---|---|---|---|---|
| 思考オフ | 10/24 | 1/15 | 24,896 | $0.0028 |
low | 24/24 | 15/15 | 59,752 | $0.0019 |
high(標準) | 24/24 | 15/15 | 90,488 | $0.0028 |
max | 24/24 | 15/15 | 117,241 | $0.0036 |
思考オフでは 39 回中 28 回が不正解だった。そのうち 17 回は、計算過程を示さず、5 token 以下の数値だけを返した。思考を有効にした場合は、どのレベルでも全問正解だった。違いは出力量だけだ。
max は 13 タスク中 12 タスクで low より出力が長く、合計の出力 token 数は 1.96 倍だった。片方の設定の出力が長かったタスク数を調べる符号検定と、5 つの比較を同時に行う影響を調整する Holm 補正で確認したところ、この差は有意だった(p = 0.002)。high の token 数は low の 1.51 倍で、13 タスク中 11 タスクで長かった。ただし補正後は傾向にとどまり、有意な差とはいえない(p = 0.09)。DeepSeek のドキュメントでは、reasoning_effort を省略すると同じ high になるとされている。実測では、明示的に high を指定した実行より 14% 少なかった。同じ設定でも、実行間にこの程度のばらつきは生じる。
2 つの制御方法と、測定に使った値のレスポンス内の位置は次のとおり。
import os
from openai import OpenAI
client = OpenAI(base_url="https://synthorai.io/v1", api_key=os.environ["SYNTHORAI_API_KEY"])
prompt = "How many positive integers below 1000 are divisible by 3 or 5 but not by 15?"
resp = client.chat.completions.create(
model="deepseek-v4.1-flash-1017",
messages=[{"role": "user", "content": prompt}],
reasoning_effort="low", # "low" | "high" (default) | "max"
# extra_body={"thinking": {"type": "disabled"}}, # thinking off instead
)
u = resp.usage
reasoning = u.completion_tokens_details.reasoning_tokens # billed as output
cache_hits = u.prompt_tokens_details.cached_tokens # billed at 2% of the input price
thinking_text = resp.choices[0].message.reasoning_content
コーディングエージェントのループに思考は必要か
今回のコード修正タスクには必要なかった。ただし、いずれも簡単なタスクだ。全設定で 30 件中 30 件を解決し、思考オフと low が最も安かった。ここでいうエージェントループとは、モデルがツールを呼び、その結果を読み、タスクが完了したと判断するまでターンを繰り返す処理を指す。1017 には、小さな Python パッケージと、意図的に埋め込んだバグに基づく 3 つのタスクを渡した。内容は、金額のパース処理の修正、2 種類の入力形式の追加、残高不足チェックと月次レポートの修正だ。ツールはファイル一覧、ファイル読み取り、ファイル書き込み、公開テスト実行の 4 つを用意した。モデルには見せない隠しテストを最終的なファイルに対して実行し、合格した場合だけ成功とした。各タスクを設定ごとに 10 回、最大 30 ターンまで実行し、モデルのコードは隔離されたサンドボックスで動かした。ターン数、出力 token 数、所要秒数は 1 回あたりの中央値。成功 1 件あたりの費用は、ピーク時間帯の定価による総費用を成功数で割った値だ。
| 設定 | 成功数 | ターン数の中央値 | 出力 token 数の中央値 | 秒数の中央値 | 成功 1 件あたりの費用 |
|---|---|---|---|---|---|
| 思考オフ | 30/30 | 9.5 | 2,213 | 25.5 | $0.0042 |
low | 30/30 | 8 | 2,398 | 24.7 | $0.0044 |
high(標準) | 30/30 | 9 | 3,654 | 33.1 | $0.0066 |
max | 30/30 | 9 | 6,184 | 44.5 | $0.0099 |
| 思考オフ、テストツールなし | 28/30 | 6 | 1,680 | 16.4 | $0.0034 |
low、テストツールなし | 30/30 | 6 | 1,778 | 17.1 | $0.0035 |
思考レベルを変えてもターン数はほぼ変わらなかった。増えたのは各ターンの推論量で、思考オフではゼロだったものが、max では出力の 72% を占めた。各タスクの 10 回の実行について、一方の設定の費用がもう一方より一貫して高いかを調べる Mann-Whitney 検定を行い、12 の比較全体に Holm 補正を適用した。high は 3 タスクすべてで low より高く、費用は 1.24 倍から 1.70 倍だった。max は 3 タスク中 2 タスクで high より高かった。思考オフと low の差は判別できなかった。
最後の 2 行は対照実験だ。同じタスクからテスト実行ツールを外し、採点前にモデルがフィードバックを得られないようにした。それでも思考オフは 30 件中 28 件を解決した。この低下は有意ではない(2 群の成功数を比較する Fisher の正確確率検定で p = 0.49)。今回のタスクでは、思考オフで成功するためにテストのフィードバックは必須ではなかった。単発問題で思考オフが失敗したのは、1 回の応答内で多段階の計算や探索が必要なタスクだ。一方、今回のコード修正は少数のファイルを読んで編集する作業であり、1017 は思考なしで処理できた。
タスクは意図的に小さくしている。ファイルは数個、バグはコードを読めば見つかり、30 ターン未満で終わる。多くのファイルにまたがる機能追加、長時間のデバッグ、初めて扱うコードベースなど、難しいエージェント作業では、より高い思考レベルが必要になる可能性がある。DeepSeek が 1017 で訴求しているのも、まさにそうしたプロジェクト作業だ。今回は検証していない。単純なツール利用タスクは思考オフか low から始め、複雑なタスクや失敗が出る場合に high へ上げるのが妥当だ。
思考を有効にして tools を含むリクエストを送る場合、DeepSeek の思考モードガイドでは、過去の全 assistant ターンの reasoning_content を送り返す必要があるとしている。送らない場合は 400 エラーになると明記されている。
msg = resp.choices[0].message
messages.append({
"role": "assistant",
"content": msg.content or "",
"tool_calls": msg.tool_calls,
"reasoning_content": msg.reasoning_content, # required with tools in thinking mode
})
キャッシュとオフピークでどれだけ安くなるか
今回のエージェント実行では、キャッシュで費用が半分以下になり、オフピークなら残りがさらに半額になる。エージェントループは毎ターン会話全体を再送するため、テストツールありの 120 回の実行では、入力が全 token の 90% を占めた。その入力の 82% はキャッシュヒットとして、通常の入力料金の 2% で課金された。ピーク時間帯の定価では 120 回で $0.75 だったが、キャッシュ割引がなければ同じ token 数で $1.66 かかる。キャッシュ適用後の請求額は、出力が 71%、キャッシュされなかった入力が 27% を占めた。つまり、1017 エージェントの費用をさらに下げるうえでは、思考レベルの影響が最も大きい。同じ token 数をオフピークに処理すれば $0.38 となる。
DeepSeek の API ではキャッシュは自動で適用される。キャッシュ書き込み料金はなく、明示的な指定も不要だ。検証では、6,069 token のプロンプトを 2 回送ると、2 回目は 6,016 token がキャッシュヒットとして課金された。プロンプトの先頭は固定し、system prompt とツール定義を先に置き、リクエストごとに変わる内容は最後に置くとよい。
1M のコンテキストウィンドウは実際に使えるか
情報の取り出しには、ウィンドウ全体を使えた。さまざまな文からなるダミーテキストに、7 桁のコードを含む 1 文を隠した。思考をオフにしてコードを尋ね、プロンプト内の 3 つの位置で試した。
| プロンプト長(token) | 10% の位置 | 50% の位置 | 90% の位置 | 秒数 | ピーク時のリクエスト単価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 128,292 | 未実行 | 発見 | 未実行 | 4.7 | $0.04 |
| 256,351 から 256,538 | 発見 | 発見 | 発見 | 7 から 8 | $0.08 |
| 512,795 から 513,058 | 発見 | 発見 | 発見 | 12 | $0.15 |
| 1,001,357 から 1,001,531 | 発見 | 発見 | 発見 | 25 から 26 | $0.30 |
115 万 token のリクエストは HTTP 400 で失敗し、エラーには上限が 1,048,568 token と示された。上限を超えるリクエストは処理開始前に拒否され、黙って切り詰められることはない。この検証は、明記された 1 つの事実を取り出すものだ。長いプロンプトの各所に分散した多くの事実を使う推論は、より難しい課題であり、今回は試していない。
ワークロード別にどの設定を選ぶか
| ワークロード | 設定 | 実測上の根拠 |
|---|---|---|
| 単純なコーディングエージェント作業(ファイル数個) | 思考オフまたは low | 30/30 件に成功し、1 件あたり $0.0042 から $0.0044。high の費用は 1.24 倍から 1.70 倍 |
| 複雑なエージェント作業(多数のファイル、長時間のデバッグ) | high から開始 | 今回は未測定。エージェントについての実測結果は単純なタスクのみ |
| 単発の数学、計画、数え上げ | low | 39/39 回正解し、正解 1 件あたり $0.0019。思考オフは 11/39 回 |
| 長文書からの情報取得 | 思考オフ | 最大 1,001,531 token で、すべての位置から隠した情報を発見。ピーク時はウィンドウ全体で $0.30 |
| バッチ処理や夜間ジョブ | 任意の設定でオフピークに実行 | 週 35 時間のピーク時間帯以外は半額 |
max | high で失敗すると実測できた場合のみ | どちらのタスク群でも必要にならなかった |
どの思考設定も、エージェントが実行できるテストスイートや検証処理の代わりにはならない。テストツールなしでも思考オフは 30 件中 28 件を解決したが、残りの 2 件は採点まで失敗を検出できなかった。DeepSeek の API で deepseek-v4-flash や deepseek-flash を呼び出している場合は、10 月 17 日以降の回帰テストも計画しておく必要がある。その名前で提供されるモデルが変わったためだ。
Synthorai での扱い
Synthorai では、1017 に専用のモデル ID deepseek-v4.1-flash-1017 を割り当てている。既存の連携の挙動を維持するため、DeepSeek の API のように旧 ID の参照先は変更していない。deepseek-v4.1-flash は引き続き 9 月版の V4.1 Flash を指し、1017 を使うにはモデル ID を変更する。/v1/chat/completions で提供しており、料金は DeepSeek の定価と同じく、100 万 token あたり入力 $0.30、出力 $1.20、キャッシュ読み取り $0.006。reasoning_effort と thinking: {"type": "disabled"} はそのまま転送され、思考を有効にした呼び出しでは reasoning_content が返る。キャッシュヒット数は usage.prompt_tokens_details.cached_tokens に記録される。本記事の費用はすべて DeepSeek のピーク時間帯の定価で計算している。実際に使う時間帯に合わせて換算できる。
FAQ
DeepSeek V4.1 Flash 1017 は deepseek-v4-flash とは別のモデルか?
DeepSeek の API では、現在はその名前で 1017 が提供されている。DeepSeek の料金ページによると、旧 ID の deepseek-v4-flash と deepseek-v4-flash-vision-exp は DeepSeek V4.1 Flash 1017 を提供し、Flash の料金が適用される。deepseek-flash も同じモデルを指す。9 月版の V4.1 Flash は DeepSeek の API では提供されなくなったが、第三者のホスティング事業者は引き続き公開済みの重みを使って提供している。Synthorai では旧 ID は旧版のままで、1017 の ID は deepseek-v4.1-flash-1017 となる。
DeepSeek V4.1 Flash 1017 の思考はオフにすべきか?
単純なコード修正やツール利用タスクならオフにする。今回のエージェントループでは、1017 は思考オフで小規模なコード修正 30 件すべてを解決し、1 件あたり $0.0042 だった。テストツールなしでも 30 件中 28 件を解決した。複数段階の計算や計画が必要な単発の質問では、low で有効にしておく。この条件では、思考オフの正解が 39 回中 11 回だったのに対し、low は 39 回すべて正解した。複雑なエージェント作業には high を検討するとよいが、今回は検証していない。
DeepSeek V4.1 Flash 1017 のコンテキストウィンドウは本当に 1M token あるのか?
ある。1017 は、1,001,531 token のプロンプトの 10%、50%、90% の位置に隠した情報を取り出せた。所要時間は約 25 秒で、ピーク時間帯の定価では 1 リクエストあたり $0.30 だった。1,048,568 token を超えるリクエストは HTTP 400 を返した。
関連記事:DeepSeek V4.1 Flash の費用、DeepSeek V4 Pro の正式版とプレビュー版の比較、LLM の思考制御、プロンプトキャッシュの書き込み費用、長いコンテキストの料金区分。
2026 年 10 月 19 日に Synthorai ゲートウェイ経由で測定。モデル ID は deepseek-v4.1-flash-1017。単発の呼び出し 195 回(13 タスク、5 設定、各 3 回)、エージェント実行 180 回(3 タスク、テストツールなしの 2 設定を含む 6 設定、各 10 回)、長いコンテキストのリクエスト 11 回を実施した。費用は DeepSeek のピーク時間帯の定価で計算。Artificial Analysis の数値は 2026 年 10 月 19 日に確認。